私たちが海のために出来ること

© Conservation International/ photo John Martin

初めまして!1月からCIジャパンでインターンをさせていただいている本木と申します。普段は、大学で生態系保全について学んでいますが、実際の社会ではどのような取り組みをしているのか知見を深めるためにCIジャパンへ参加させて頂きました。

突然ですが、皆さんは「里山」と聞いて何をイメージするでしょうか。

畑、水田、森、川などなど…。緑が多いイメージを持っている方がほとんどだと思います。実は、そんな里山は「SATOYAMA」として世界共通の言葉となっています。自然と人が共存している環境のことを言います。人の生活や生産活動の場であると同時に、多様な生きものの生息・生育空間である海辺もここに含まれます。人間は自然を利用しながら、暮らしを支えるサービスを手に入れる一方で、自然も、人間の手が入った環境に適した生態系へと変化し、その生態系は人間の手が入ることで維持されてきました。地域によって利用されている自然環境は、山や川、草原、または海洋沿岸もあったりと様々ですが、世界中で人の生産活動と自然の生態系の関わりによって生まれた環境「SATOYAMA」が見られます。

皆さんもご存知の通り、日本の多くの地域では山や川と共存してきました。世界には海と共存してきた地域もあります。

そこで今回は、2017年から2020年の3年間に行われたSATO YAMA UMIプロジェクトの一つについてお話をさせて頂きます。日本環境教育フォーラム、バードライフ・インターナショナル東京との協働プロジェクトで、CIの担当したフィールドは海洋沿岸地域でした。SATO YAMA UMIプロジェクトとして、サモア、ニューカレドニアで活動をしました。今日は、一風変わったサモアのユニークな教育プログラムをご紹介します。

サモア諸島は南太平洋に位置し、サモア独立国とアメリカ領サモアに分かれています。CIはこのうちサモア独立国で活動を行いました。サモアの人々の多くは沿岸部付近で生活していて、古くから航海術に長け、海の恵みに依存していました。

CIが注力する「パシフィックオーシャンスケープ」という海洋資源保護の連帯を目的とした、海洋保全プログラムに参加している各国。サモアはその一つ。

しかし近年、急激な人口増加や近代化によって過剰な漁業が行われるなど、非持続的な社会になってしまっています。サモアの豊かな海洋はサモアの人々の暮らしを支える基盤であり、今後も維持していかなければならないものです。

そこで、サモアのSATOYAMAを守るため、海洋資源を採り尽くしてしまわないよう海洋保護区を設置するなどの対策を行いました。さらに、古くから自然と共存してきた先祖の知恵と最新の科学的な知見を用いて持続的な社会モデルの構築を目指し、教育プログラムを開発・実施しました。




プログラムでは、海洋保護区域に近い2地区13校で教員への研修と8~12歳の子どもたちやその家族に向けて、海との持続的な関わり方についての意識向上を目指しました。サモア・ボヤジング・ソサエティー(SVS)との協働によりサモアの伝統的な長距離航海用カヌーVaa’を移動式教室とした画期的なもので、内容も遊び感覚で学べるようゲーム形式になっており、5つのテーマに分けて行いました。

サンゴチャンピオンズ:サンゴの生態について学ぶクラス。ただの石のようなサンゴですが、実は多くの生き物の大切な場所であることを伝えました。

ワイズフィッシャー:水産資源を取り尽くさないための工夫を学ぶクラス。水産物に見立てたコマがなくならない様にするゲームで水産資源の保護と海洋保護区(MPA)や禁猟区(No Take Zone)といった資源管理学の考え方を伝えました。


© Conservation International


ツリーガーディアンズ:陸の豊かさと海の豊かさは繋がっていることを学ぶクラス。マングローブや森林が陸から海への土砂流出を防いでいるため、むやみに木を伐採してはいけないことを伝えました。

トラッシュポリス:プラスチックゴミの有害性とゴミ処理の仕方についてのクラス。伝統的に自然のものを使い、使い終われば自然に還していたサモアの人々に、基本的な3Rや分別、ゴミの削減などを伝えました。

サモアンボヤージャー:伝統的な航海用カヌーVaa’を復元した船で行われるクラス。航海の道標となる星や風の読み方など伝統的な航海法について伝えました。なおこの船には太陽光パネルやGPSなど科学と伝統が共存しています。


© Conservation International/photo by Schannel van Dijken


サモアの子供たちは、海と人はお互いに寄り添っていることを理解し、利用した分だけ環境保全もしていかなければならないことを学びました。さらに、当初より連携を深めてきたサモア政府からも国の公式教育プログラムとして認定され、順次カリキュラムに組み込まれています。

このプログラムは他の太平洋島嶼国への展開も始まっており、人と海の共存の輪は広がっています。魚を食べる文化を持つ私たち日本人も海のために何ができるのか考えていきたいですね。

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